Summer Pockets 考察 Pocketルート

Otaku Advent Calendar 2019 24日目の記事です.

adventar.org

  

いろいろあってプレイしたSummer Pocketsについて自分なりの考えをまとめて書いています.ネタバレしか含んでいないのでまだSummer Pocketsをプレイしていない方,プレイしているがPocketルートまで進んでいない方はそこまで進んでからお読みください.

 

 

 

 

本題

この記事では主にPocketルートにおいて「空門藍,久島鴎,紬・ヴェンダース」が生存していることについて考察しています.

 

私は

  • Key作品はプレイした経験無し
  • 友利奈緒は知ってる

 ぐらいの知識量なのでKeyらしさとかよくわからないなりに(?)書いています.

 

目次

 

時間軸について

冒頭で

主にPocketルートにおいて「空門藍,久島鴎,紬・ヴェンダース」が生存していることについて考察しています.

と書いたもののそれを理解するまでに膨大な前提がありすぎることに気づき,Pocketルートの理解を深めるにあたりSummer Pockets時間軸の全体像を把握する必要があると考えました.

羽依里がやってきた夏を現在,それまでに起こっていた事象を過去,夏以降に起こる事象を未来とし下図に羽未視点の時間軸を重要そうな事柄と一緒に並べました.個別ルートとして重要な事柄ではなく全体を把握するために重要だと感じた事柄を並べています.後から使う事柄も多いので細かいところはスルーしてもらっておkです.Pocketルートはまた別であります.  

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図1. 時間軸 ALKA TALEまで

 

図をもとに考えを述べていきます.

Summer Pocketsにおける時間軸はパラレルワールド

羽未視点で時間軸を整理した場合パラレルワールドではないと考えます.パラレルワールドの場合,複数の別の現実が存在することになります.つまり羽未やしろはが複数の現実に存在することになります.しかし,羽未は「時間を旅している」という記述があることから羽未は単一の存在であると考えます.

羽未およびしろはが過去にすがった時点でその時間軸は当人目線では棄却される(ただし記憶としては残る)というのが私なりの結論です.

 

 ゲームスタート

羽未は母親であるしろはと夏を過ごすために過去へ何度も戻ります.1回目の時間軸では13歳の羽未が未来から戻るところがスタートです.「何度も夏を繰り返してきた」という発言からもゲームスタート時点で羽未は何度か過去へ戻ることを繰り返していると考えるのが自然だと思います.

 

ルート順序

Summer Pocketsでは

ヒロイン個別ルート(順不同) → ALKA TALE → Pocketルート

の順番でプレイできるようになっています.

このことから時間軸(1回目, 2回目... )としての順序もこれと同じでありそれに沿って矛盾の無いようにできている,逆にいうとこの順序でなければALKA TALEおよびPocketルートは成立しないと考えます.

 

個別ルート(+ ALKA TALE)

個別ルートといって各ルートにおいての考察ではなく,Pocketルートでの結末を紐解くために必要な要素を振り返る程度です.

共通事項

まず個別ルートにおいて共通で起こっていると考えられる事象をあげます.

ひとつは各ヒロインの七影蝶が羽未を構成する蝶の1つになっていることです.後述するPocketルートでの各ヒロインが助かることにも関わってきますが,ALKA TALEにおいて羽依里と各ヒロインと過ごした夏休みの記憶を羽未が保持しています.また,各ルートにおいて羽未は羽依里とヒロインのやりとりを全て観測しているわけではないはずなので七影蝶の記憶から間接的に自分の記憶になっているのではないかと考えます.

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図2. ALKA TALE 各ルート 回想

 

もうひとつは各ヒロインルートにおいてヒロイン以外にもしろはの「記憶」も羽未を構成する蝶の1つになっていることです.Pocketルートにおいて七海が幼いしろはに各ヒロインルートでのしろはの記憶を伝えていく描写があります.これが七海(羽未)を構成する蝶にしろはの「記憶」も含まれていると考えた理由です.

なぜ「記憶」と強調したのかですが「七影蝶≒当人の魂」のように考えてしまうとしろはが同じ時間軸に複数人存在することを許してしまうからです.藍・蒼・鴎・紬を見ると七影蝶は一人の人間に一つであり,あたかもその人の魂を表しているように感じてしまいます.しかし蒼ルートでは「七影蝶は人の記憶の残滓,未練や悔いを残した人の記憶」とされています.

羽未を救うために過去へ遡るしろはの七影蝶は単一の存在であり複数存在しない.それ以外のしろはの七影蝶は魂そのものではなく別々の記憶であるというのが私の見解です.七影蝶が過去の自分に宿ることを未来視であると考えるとしろはルートで複数回未来視が起こることもこの考え方が辻褄が合うと思います.

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図3. Pocketルート 回想 しろは(鴎ルート)

 

蒼ルート

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蒼ルートにおいて特筆すべき事柄は

  • 藍が目を覚まさなくなった(蒼と藍の事故が起こった)のは10年前である
  • 身体に還ったことで藍の七影蝶は消失した
  • 羽未に編まれた蝶は藍ではなく蒼である

です.

上2つは事実であり特に説明は必要ないと思いますので羽未に編まれた蝶が藍ではなく蒼である理由について説明します.

主な理由は3つあります.

    • 藍の七影蝶は消失している
    • (蒼ルートではうみが戻った時期は明確に示されていないが)蒼が七影蝶になってしまっている時期に羽未は過去に戻っていると考えられる
    • ALKA TALEにおいて述べられている羽未に残っている蒼ルートの記憶は「大切な人との思い出を育み導く夏」である(図2 参照)

蒼ルートにおいては羽未が戻った時期が鏡子によって明言されていないため,夏の終わり=8/31に戻ったとするならば藍の七影蝶は消失していて代わりに蒼が寝たきりになってしまっている時期(=蒼の七影蝶が存在している)であると言えます.

ALKA TALEにおける記憶 「大切な人との思い出を育み導く夏」の「導く」という言葉からも蒼の記憶であると考えます. 

もしこの理論が当てはまっていればという話になりますが,蒼が七影蝶化してしまった理由が蒼ルートにおける泣き要素以外にもPocketルートでの結末としてつながるためであると思うとかなり考えられていると感じます.

 

鴎ルート

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鴎ルートにおいて特筆すべき事柄は

  • 病気が発覚したのは鴎が5歳の頃(12年前)
  • 父親のフィールドワークで鳥白島に来たのは10年前 → この時点で父親はまだ生きている
  • 父親と同じ病気であることが発覚しているが病状は良くなってきていた
  • うみは海賊船が完成する前に帰っている(鏡子談)

です.

父親がいつ亡くなったかは明言されていませんが鷺が「早くに亡くなった」と発言している通りに考えればフィールドワークで鳥白島に来てからそう遠くないうちに亡くなったと推測できます.

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図4. 鴎ルート 鷺

鴎ルートにおける事柄は事実のみなので特に説明は必要ないかと思います.

ただ一つの懸念点は図3に示したPocketルートでのしろはの回想(鴎ルート)はうみが帰ってしまったよりも後に起こっていることです.

実際にはうみは帰っておらず七影蝶としてしろはの様子を見ているのか,しろはの七影蝶が後から羽未を編む蝶の一匹となったのか,そもそも回想は同じようで違う似た景色のものなので別の記憶であるのか(図5参照)など考えられる選択中が多く未だに結論が出ません.

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図5. 鴎ルート 本編 / Pocketルート 回想 しろは(鴎ルート)

 

紬ルート

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 紬ルートにおいて特筆すべき事柄は

  • ぬいぐるみが紬 ヴェンダースの形を成した(静久およびのSS参照)のは現在よりもかなり前のこと
  • 加藤祖母は現在の夏の直前に亡くなっている → ツムギのことを知っている人がいなくなったため紬としての役割を終えた
  • 役割を終えたので今年の夏の終わりまでしか居られない
  • 静久,羽依里と過ごしたことで2人ともっと一緒にいたいという感情が生まれた

です.

どれも説明する必要はないかと思いますが最後の事柄だけはPocketルートで紬が生存している理由につながっていると考えているので(後述します)太字で表しています.

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図6. 紬ルート 紬のやりたいこと

 

しろはルート

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しろはに関してはPocketルートで生きているのは元々のことなので特筆すべきことはないように思います. 

他の人物の生存に関わってくる点では

両親が亡くなった(しろはルートでは母も含めて亡くなったとされている)のは10年前の出来事である

ことです.Pocketルートで七海が戻る地点に関わっています.

上図の時間軸には未来視が起こった地点を示していますがこれはこの節の共通事項に書いているとおりです.

 

ALKA TALE

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各ヒロインルートを経ることで羽未を構成する蝶に鴎,蒼,紬,しろは全員が含まれている状態で夏の始まりに戻ったルートがALKA TALEであると考えます.ALKA TALEの要素は羽未としろはに重点を置いています.羽未を構成する蝶として含まれていること以外にはPocketルートでの藍,鴎,紬の生存している理由に影響を与えているような特筆すべき事柄は無いと思います.

 

Pocketルートでの生存

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図7. Pocketルート 時系列要素

ようやく本題にたどり着けました.図7は現在の夏よりも以前に起きた過去の要素を中心に並べたものです.七海がたどり着く10年前の夏に起こる事柄は

  • 鴎: 父親のフィールドワークで鳥白島へ来る
  • 蒼: 藍が崖から落ち目を覚まさなくなってしまう
  • しろは: 父親が亡くなる 母親が失踪する
  • しろは: 未来視の力を得ない

です.これらに関してはどれが先に起こっているのか言及されていないためPocketルートでの藍,鴎の生存理由として成立し得ると私なりに考えた順序で図7に並べています.

Pocketルートでの藍,鴎,紬の生存理由の説明をしていくにあたり共通する要素は

七海を構成していた蝶が本人の身体に還る

七影蝶になった原因は各ヒロインルートで解決されている

解決された原因と同じ七影蝶は発生しなくなる(推測)

ことです.これをベースに藍,鴎,紬について個別に説明していきます.

 

空門藍

七海を構成する蝶に藍は含まれておらず,蒼の蝶であるというのは個別ルートの項で説明したとおりです.

蒼ルートでの藍の七影蝶は「蒼と仲直りしたい」という藍が蒼を思う記憶です.蒼ルートでは藍の七影蝶となった原因が解決され,七影蝶化した蒼の記憶が七海に編まれていると考えます.

端的に表すと以下のようになります.

藍が崖から落ち目を覚まさなくなる→蒼が藍の七影蝶を見つける(藍が七影蝶になってしまった原因は解決される)→藍の身体に七影蝶が還る→蒼が代わりに寝たきりになる→蒼七影蝶化

この蒼の七影蝶が藍が崖から落ちる事故(?)が起こる前に蒼に還ることで同じ七影蝶が発生しなくなり,Pocketルートでは上記の一連の事象が起きなくなったと考えます.その結果事故は起きず藍はPocketルートにおいて生存した状態(目を覚ました状態)であると考えます.

 

久島鴎

鴎が七影蝶となった原因は病気が悪化してしまった結果「ひげ猫団の冒険」をすることができなかったことです.小説の中の冒険を本当の思い出にしたかった.そんな思いを鴎ルートでは羽依里が解決しており,解決した鴎の七影蝶が七海に編まれていると考えます.

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図8 鴎 七影蝶化の原因と解決

ここからPocketルートの話に戻ります.

七海が過去にたどり着いた時点ですでに起こってしまっていることは変えられないため鴎が父親と同じ病気を患っている点はPocketルートにおいても同じであると考えます.七海ががたどり着いた時点である10年前は父親のフィールドワークで鴎も鳥白島に存在していることから七海から解き放たれる七影蝶が本人に還ることが可能です.

鴎が病気を患っていることは変わらないため10年前の時点で同様に「ひげ猫団の冒険」を作ります.Pocketルート以外で「ひげ猫団の冒険」を本当の思い出にできなかったのは2年前に鴎の病状が悪化してしまったためです.鴎ルートでの記憶が10年前の鴎本人に還ることで2年前の病状の悪化がなくなったことがPocketルートにおいて鴎が生存している理由であると考えます.鴎ルートにおいて2年前に病状が悪化するまでは良くなっては悪くなるを繰り返していると鷺が発言していることからPocketルートにおいて鴎の病状は良くなっている(完治している?)のではないでしょうか.

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図9 鴎の病状

 

まとめると以下のとおりです.

鴎ルート

父親と同じ病気であることが発覚(12年前)→父親のフィールドワークで鳥白島へ(10年前)→父親が亡くなる(?年前)→病状が悪化(2年前 七影蝶化の原因)→鴎が亡くなる(夏の始まる前)→七影蝶化した鴎の夢を羽依里が叶える

Pocketルート

父親と同じ病気であることが発覚(12年前)→父親のフィールドワークで鳥白島へ(10年前)→鴎ルートの記憶が身体に還る(10年前)→父親が亡くなる(?年前)→(七影蝶化する原因が解決されている記憶が宿っているので)病状が悪化しない→鴎が生存

 

鴎の生存理由とはずれた話になりますが少し続きの考察です.

鴎ルートにおいて海賊船が完成する前にうみは戻っています.よって羽未に編まれている鴎の記憶では海賊船が完成していないことになります.Pocketルートにおいて鴎と鷺らしき人物の会話で「ひげ猫団の冒険」のクオリティに納得していないこともこれに起因するのではないでしょうか.完成していない時の記憶が編まれたからこそPocketルートでも「ひげ猫団の冒険」を再現しようとする気持ちは変わっていないとも考えられます.

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図10 Pocketルート 鴎 鷺の会話

 

ヴェンダース

藍や鴎の場合と違い,紬に関しては10年前から現在の夏までの間に七海を構成する七影蝶が解き放たれる影響で変わるような事柄はありません.七海が10年前にたどり着いた時点で既にツムギ ヴェンダースの代わりである紬 ヴェンダースとして存在していると考えられます.そのため他2人とは違う視点で考える必要があります.

何十年も前に紬がぬいぐるみから人の形を成した(七影蝶が人の形を得た)理由は失踪したツムギのことをみんなが忘れないようにとぬいぐるみであった紬が願った結果です.現在の夏の前に加藤祖母が亡くなったことによってツムギのことえお覚えている人間が居なくなり,この時点で紬の七影蝶化した原因は解決されています.紬ルートでは鳥白島に居る意味を探すためにやりたいことを探します.その結果紬は静久,羽依里と遊びたい一緒にいたいという気持ちを持つことになります.

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図11 紬ルート 鳥白島に居る理由

結果として

  • ツムギを知っている人が居なくなったからツムギの代わりをする必要はない
  • 静久,羽依里と一緒にいたい(図6参照)

この2つの記憶を持った七影蝶が紬ルートで羽未に編まれ,10年前に七影蝶が解き放たれます.

Pocketルートでも加藤祖母が亡くなるまでは紬はツムギの代わりをしており,役目を終えた時点ツムギの記憶は紬の中から消え去る.「静久,羽依里と一緒にいたい」というもう1つの七影蝶の記憶が人の形を成した結果がPocketルートにおける紬なのではないかと考えます.私はこの紬がどこからかやってきた人間であったりツムギが結ばれて結果的に後々生まれてきた子供ではなく,元々ぬいぐるみに宿っていた七影蝶であると思っています.(役目を終えた時点でぬいぐるみと紬は別離になる)

Pocketルートで紬が灯台についての記憶はないが鍵を持っていることや紬がぬいぐるみを持っていることからこのように考えています.

紬は起こってしまっている過去が変えられないので少々強引になってしまったというか理由付けが難しかったです.

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図12 Pocketルート 紬

 

おわりに

本当は蔵についてとか時間軸の1番最初に起こっていたことについても書きたかったんですが修論やらないといけなくて時間が足りませんでした.

どれが合っていてどれが間違っているかなんてわかりません.様々な考察を読んだりした結果自分なりの考えを出してみるとことが大事だと感じました.

ここまでお読みいただきありがとうございました.

明日は「Summer Pockets」ショートストーリー ~夏の眩しさの中で~ 加藤うみ編の更新予定日です.

 

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